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土, 05 1月 2013 14:14

ソガムを屠る-冬が来る前に-

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最近、連続でカザフの「食」文化について、書いています。自分も、今現在見ている途中なので、文章でなかなかうまく伝えきれない部分も多いのですが、おつきあい頂ければ幸いです。(ご質問などありましたら、コメント欄から是非お寄せください。)
 
***
 
ここバヤンウルギーに住むようになってからよく思う事があります。
それは、『肉がおいしい』ってことです。
 
 
ここでは、日本のスーパーでよく見ていたような「パッキングされて並べられたお肉」を見ません。そのかわり、「屠殺した羊の胃袋や馬の腸の中に詰められた肉のかたまり」や「がちがちに凍ってる巨大な肉のかたまりや骨付き肉」をよく目にします。【肉】ひとつをとってみても、彼等と私の感覚はまるで違っていると感じることが多々あります。命との距離がまるで違うとも感じます。
 
 
それは、11月上旬のある日のことでした。
 
 
突然、家の人達がバタバタと忙しなく動き始め、夕方にもかかわらず親戚達を家に呼び始めたのです。一体何が始まるんだろう?と、家の外に出てみると、家の敷地内に馬1頭と牛2頭、羊ヤギ8頭がうろうろしてて......びっくりしたぁ。笑

 
「これから、ソガムを屠るのよ!」
 
 
”ソガム”とはカザフ語で、訳せば「冬の食糧」という意味です。ここの人々が食べる肉の量は、本当に半端なく、スーパーや市場でちょっと買えば足りる、なんてものではないのです。そして、自分たちが食べる食糧は自分たちで屠る。本格的な冬になる前に、必ず行わなければならないことなのです。
 
 
家畜が到着したのが夕方5時すぎ、親戚一同が集まったのが夜7時頃。もう辺りも真っ暗になったこの時間から、馬と牛の屠殺がはじまりました。


(*以下、屠ったときに撮影した写真が含まれています。)
 
 
 
馬の足を縛り、お祈りを捧げたあと、大人男性5-6人がかりで馬を押し倒し、馬の頸動脈を一気にかっ切りました。血を出し切り、馬が動かなくなったころ、馬をガレージに運び、馬を地面に仰向け(四肢が上を向いている状態)にして皮をはぐ作業をはじめました。
 
皮を剥ぎ終わったあと、今度はお腹にナイフをいれて内蔵を出しました。ものすごく長い腸....女性たちが内蔵を綺麗にする作業をはじめます。男性達は、肉を骨、筋にそってきりわけはじめます。見ているだけでは、なかなかわからないのですが、これは相当な重労働です。(ちなみに、この後続けて牛も屠殺しました。)
 
 
 
 
気がつけば、床一面真っ赤な血の色。斧で骨と肉塊を叩く音。そして、屠ったとき特有のあの匂い。なにもかもが強烈でした。。。
 
 
大型家畜の屠殺が終ったのが夜10時。そのあとガレージの後片付けをして夜11時。寒さと重労働の中、もうへろへろになって、今夜はぐっすり眠れそうだなぁと、ぼんやり思っていたその時、「あれ、そういえばまだ親戚達が帰ってない?」と、リビングで人々が何かの作業をしていることに気がつきました。
 
 
リビングに入ってみると、びっくり。さっき解体した馬のあばら骨の肉を、馬の腸につめる作業をしていたのです。この時、時間は夜中の12時をまわっていました。
 
 
 

このあばら骨の腸詰めを、「カズ」と呼びます。塩をしっかりふって揉み込んだあばら骨肉の腸詰め。塩味がきいていて、めちゃくちゃ美味しいんですが、こうやって作ってたとは、知らなかった.......。(ちなみに上の写真は、作ったカズを子ども達の寝室で乾燥させてるところ.....。)
 
 
腸詰め作業は夜な夜な続き、片付けを含めて夜中の3時に全ての作業を終らせる事ができました。もうめっちゃしんどかった.....。秋になると、みんな毎年、こんなキツいことしてるんだなぁ。しかも、自分の家の分じゃなくても、手伝わなきゃいけないのかぁ。
 
 
(ちなみに、いつか別の時にしっかり書こうと思うのですが、カザフ人の偉いところは、こんな夜中にへろへろになった状態でも、家の片付けを抜かり無くきっちりやることだと思いました。それこそ、今やらなくても明日の朝やればいいじゃんって思うくらい、きっちり。そして、こんな夜中でも、茶を飲んで寝る。これ、超大事。)
 
 
そして、この屠殺は、次の日に第二ラウンドに入る....。今度は、羊とヤギの屠殺です。1頭に約1時間。片付け含めて9時間ちょいかかりました。めっちゃ寒いし、重い水いっぱい運ぶし、睡眠時間も全然ないし、ご飯も満足に食べずに作業してて目もまわってたし、本当に本当にきつかった。
 
 
でも、これがここでの「食べる」ってことなんだなと、感じました。どんなに大変でも、これをしないと、何も食べられない。ここでは、これが当たり前のことで、私が今まで生まれ育ってきたところの食文化とはまるで違う。肉の味も違うわけです。この日にみたことがきっかけとなって、カザフの食文化や自分自身のもつ食文化に興味を持てるようになりました。本当に、いい経験をさせてもらいました...。
 
 
それから数ヶ月後(最近)、「カズ(あばら骨付き肉の腸詰め)」を食べました。あの時のあの「カズ」。.....うーん、おいしい。すごく、おいしい。
 
 
***
 
カザフの食文化についての紹介は、ひとまず、おしまいです。また、もっとしっかり観察してから、書きたいなと思っています。



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